「きみ! 大丈夫かい?」


 腕を掴まれる。

「僕の家がすぐそこです。休んでいけばいい」

 背負われ、回る目の焦点を必死で合わせようとしていた。



 そうやって、路上で助けてくれたのが圭太。

 石沢診療所へ行く途中にある、大きな家が圭太の家だったのだ。毎回、大きなお屋敷だなあと眺めていたものだ。お父様は大学の教授をなさっているらしい。

 道で発作を起こして助けられた時には、お父様もお母様も出掛けていらして、圭太が石沢先生を呼んでくれて、氷水を出してくれたり冷たい手ぬぐいを用意してくれたりした。「お手伝いは、母がそういうの嫌いで来てもらってないんです」とか言って、圭太は涼しい笑顔をした。

 助けてもらったお礼に、菓子折を届け、それのお礼だとハンカチを貰い、それのお礼に……という感じで何度も会うようになり、今に至る……と。

 大事には至らなかったものの、苦しいところを助けられたせいなのか、わたしは殆ど一目惚れに近い。