雨音色

が、その瞬間、彼女が足を滑らせた。


「きゃ!」


藤木は反射的に彼女を助けようとして、咄嗟に立ち上がり、


両手を前に差し出した。


「・・・大丈夫ですか?」


ふぅ、と大きく息を吐く。


「・・・えぇ。危ないところを・・・」


彼女も同時に安堵の吐息を漏らした。


しばらくの間、二人は感じた安堵に気をとられていた。


「・・・あ・・・すみません」


藤木は我に帰った。


彼は彼女の両手を握っていたのである。


急いで外そうとした。


が、左手だけ、外せない。


正確に言うと、外せなかった。


彼女が、しっかりと彼の手を握っていた。


「・・・もし、宜しければ・・・」


うつむいた彼女が、呟く。


「学校までの道のり、このままで歩きませんか」


彼も同時にうつむいたまま、蚊の鳴く様な声で応じる。


「・・・人がいたら、教えてくださいよ」


二人は土手を離れ、学校までの道をゆっくりと歩いていった。