雨音色

「やっぱり思った通りだわ」


彼女が嬉しそうに呟いた。


二人は土手に腰を下ろしていた。


「何が思われた通りなのですか」


「ここは月と星の光の洪水なのですね。私の家の周辺とは大違いだわ」


無邪気に喜ぶ彼女の隣で、彼が笑う。


「えぇ。ここだけはランプが置かれていませんから」


「本当、夜空の輝きが眩しい位だわ・・・。

先ほどの活動写真の二人が出会った場所でも、

このように星空が広がっていたんでしょうね。

私、この風景もカンバスに留めたいな・・・」


彼女が夜空を見つめる。


ふ、と彼はそんな彼女の横顔を垣間見た。


その時、藤木は心底不安になった。


自分の心音が相手に聞こえ伝わってしまうのではないか、と。


「眩しさなら負けていらっしゃいませんよ。むしろ・・・」


彼は無意識のうちに言葉を口にした。


「え?」


彼女が彼の方を向く。


「いえ・・・。何でもありません」


彼は彼女から目をそらし、夜空を見上げた。


「そろそろ、行きましょうか」


彼女が立ち上がった。