雨音色

「ところで壮介さん、この後はまだ授業がおありですか?」


「いえ、いつもなら授業があるのですが、今日は牧先生が・・・」


そう言い掛けて、彼は今朝の牧の言動を思い出した。


こういう事だったのか・・・。


「壮介さん?どうされましたか?」


「え?あ、いえ。何でもありません」


藤木は小さく溜息を付いた。


「それではまずあの本を研究室に置いてから、どこか参りましょうか」


「はい」


二人は教壇の方に歩き出した。


「すごい量の本ですね・・・」


「おかげで腕だけは逞しいんですよ」


彼は苦笑しながら本を抱え込む。


「少しお持ちしましょうか?」


「いえいえ、そんな・・・て、幸花さん」


彼女は彼の返事も待たず、上のほうの数冊を取り上げた。


「さ、行きましょう」


彼女は笑いながら教壇を降りて行った。


彼は呆気にとられながら、


―同時に少し照れ臭く思いながら―


その後ろをゆっくり歩いた。