山内家の広大な庭に聳え立つ木々の葉が、赤や黄色に色づいていた。
朝と夜に流れる空気には、冷気が含まれていた。
冬の匂いが、そこにはあった。
広い屋敷の空気は、外のそれと同じ温度で、
朝や夜は、暖炉に火をつけなければならないほどだった。
真夜中。
寝静まった屋敷の長い長い廊下を、月明かりだけを頼りに、
1人の女中が、足音を立てずに歩く。
両手には、お盆を持っていた。
なみなみと水が注がれたグラスから、中の水が零れることなく、
早いスピードで運ばれていく。
そして、屋敷の中のひときわ大きい部屋の前で、彼女は立ち止った。
そこは、この屋敷の主の部屋。
「ご主人様」
少し大きな声で言ったせいか、廊下に彼女の声が響き渡った。
しばらくして、「入れ」との返事が返ってきた。
ゆっくりと、彼女はドアを開けた。
そこには、ガウンを着た英雄が、窓際に寄りかかるように立っていた。
窓の外を見ている。
月の光に照らされた紅葉が、美しかった。
「お水を、持って参りました」
「ありがとう」
彼はやっと彼女の方を向くと、そのグラスを手に持ち、一気に水を飲み干す。
彼女は、グラスの中の水が空っぽになるのを待って、
こう切り出した。
「実は、嬉しいお知らせがございます」
そう彼女は言うと同時に、襟から1枚の紙を取り出した。



