牧も、野村も、驚いて目を見張る。
しかし、タマは、背筋を伸ばし、いつもと同じ、凛とした雰囲気を漂わせながら、
彼らの顔をゆっくり見ながら、言葉をつづけた。
「藤木様には、独逸に留学していただき、
学者として立派に大成していただかなければなりません」
その口調の強さに、牧は内心たじろいでいた。
動揺のせいで、どう切り出して良いかわからないほどに。
野村も、当事者ではないものの、隣に座る女性の顔をじ、と見つめていた。
タマは、す、と立ち上がり、部屋の窓へと近づく。
部屋に差し込む太陽の光は、まだ厳しい。
秋が近付いているとはいえ、残暑がそこに紛れている。
タマは目を細め、その窓から大学の構内を見下ろした。
「・・・タマさん、あの、・・・お気持ちはよく分かります。
ただ、僕は、やはり藤木君の意思を尊重したいのです」
牧が、おそるおそる、タマの背中に言葉をかけた。
徐に、タマが振り返る。
逆光のせいで、彼女の顔は良く見えなかったが。
「私は、幸花お嬢様に幸せになっていただきたいのです」
「もちろん、分かっております。2人の結婚に反対するのはもっともでございます」
「・・・いつ、私が反対している、と?」



