結局、血縁の次期当主となるべき存在を失うのが怖くて、
彼の両親は、渋々結婚を承諾した。
しかし、その後の彼女の苦しみは、想像以上だった。
傍らで、出来る限り見守り続けた彼女ですら、辛かった。
時に、夜、部屋の前を通ると、1人泣く声が聞こえる時もあった。
慰めようと、部屋の前に立って、何度もドアをノックしようとした。
しかし、
そのたびに、彼女は罪悪感に襲われた。
『あの時、もっと必死に反対しておけば』
手に持つ蝋燭立てに灯る蝋燭の炎が、揺らめくたびに、
彼女の心も揺れ動く。
彼女には、友を慰める勇気が出なかった。
それから、20年近くが経った。
その頃には、
主人と使用人、という関係に変わって、あまり言葉を交わすことがなくなっていた。
しかし、彼女はついに病に倒れてしまった。
長年の疲労が祟ったのではないか、医師はそう言った。
そして、もう一言、付け加えられた。
『もう、長くない』と。
タマの心に、鋭い痛みが走った。
『やはり、止めておくべきだったのだ』という後悔とともに。



