遠く故国を離れ、自分がこの地へ来た意味を考えた。

 俺の役割は故国を目覚めさせる事なのだ。

 砂塵を上げてこちらに向かって来る彼等は、自分の同胞だ。しかも、彼等は同じ国防の担い手。

 その彼等を俺は、後数時間後に、阿鼻叫喚の地獄へ突き落とすのだ。

 俺を恨むな。

 君達は、日本という国が生まれ変わる為の魁となるのだ。

 決して無駄死にはさせない。

 平和の為に自ら紛争の地へ赴いた君等の犠牲的精神は、必ず報われる。

 君等を死に至らしめた責任は、無能な政治家と、平和ボケした大衆にあるんだ……



 頭上にあった太陽が、いつの間にか西の方へと揺らめきながら沈んで行った。

 車両が巻き上げる砂塵が大きくなり、直ぐそこまで近付いている。

 艶消しのサンド色に塗られたトラックの姿がはっきりと確認出来た。

 男は大きく深呼吸をし、数分後に訪れる瞬間に備えた。

 俺の人差し指が、日本の歴史と政治を変えるんだ……