三山は三枝を連れて近くの駅に向う事にした。

 尾行者がいないか、念入りに注意をして細い路地を走った。

 タクシーを拾えそうな大通りまであと少しという時、突然角のコインパーキングから一台のランドクルーザーが急発進して来た。

 いきなりライトを点灯されたものだから、目が眩んでホワイトアウトのようになった。

 立ち尽くしていた三山の身体が、強い力で引き倒された。

 三枝の体重が三山の上に圧し掛かって来た。

 タイヤのスキッド音が静寂の夜を切り裂く。

 倒れ込んだ二人の横を掠めたランドクルーザーは、四、五メートル先で止まった。

 ギアをバックに入れる音がはっきりと聞こえ、再び向って来た。

 下になっていた三山は、三枝の身体に力一杯しがみ付きながら転がった。

 道路脇の民家のガレージへ転がった二人の横を、間一髪の差でランドクルーザーが走り抜けた。

 凄まじい衝撃音が鳴り響いた。

 ランドクルーザーの後部を、数メートル先の民家へ突っ込ませたまま、運転席から黒尽くめの男が降りて来た。

 爆発のような物音に驚いて飛び出して来た住民達に目もくれず、男は右手を三山達の方へ真っ直ぐに突き出した。

 周囲の家々から漏れる灯りに映し出されたそれを見た三山は、

「嘘っ!?」

 と絶句した。

 彼女は死を意識する間も無く、乾いた発射音を聞いた。

 そして、三山の意識は最初の発射音と同時に途切れた。