直ぐに同僚の広田巡査長がやって来た。

「加藤さん、向こうへ行っても余り無茶しないで下さいね」

 半分冷やかすような口振りで広田が言った。

「無茶なんかしねえよ。たかが応援じゃねえか」

「加藤さんからすれば無茶とは思えない事でも、周りから見れば結構暴走気味に見えますからね」

「言いやがる」

 本庁の機動捜査隊から、千葉の館山署の捜査三課へ異動となって一年近くになる。

 その間、これといった事件にも遭遇せずに過ごして来た。

 本庁時代は、それこそ分刻みの忙しさだった。

 多様化する凶悪犯罪に日々追われていた一年前が、何処か懐かしくさえ思える。又、あの頃のような緊張感の中に身を置けるのかと考えると、今回の応援もそう悪くないなと思った。

 広田に管内で発生した空き巣事件の引継ぎをして、加藤は自分の車で君津署へ向かった。