「よう」

「加藤さん……」

 三山はいきなり現れた加藤を見て、急に泣き出しそうな顔をした。後になってその事を加藤に何度もからかわれた。

「あれから全然連絡をくれないし、ケータイは繋がらないし。加藤さんも冷たいですよね」

「あんたと捜査対象が別々になっちまったからな」

「それにしたって……」

 三山が言葉を続けようとすると、加藤がズボンのポケットからハンカチに包んだ物を差し出した。

「え?」

「連絡したくても出来なかったんだよ」

 ハンカチを広げると、そこにはバラバラになったケータイ電話があった。

「こいつと、一番上等な背広がおじゃんになっちまった……。足立で撃たれた時、こいつが胸のポケットに入っていた。あん時、あんたの写メ、撮っただろう」

「あ、私が一緒に現場へ行きたかったって言った時ですね……」

「ああ。で、そのまま胸のポケットに入れてたんだ。防弾ベストも着ていたから、こいつだけのお陰で命拾いしたってえ訳じゃねええが、その、何と無く……」

「何と無く?何ですか?」

「あんたに、護られた……ような、そんな感じがさ……最高のお守りになった」

 加藤がそういう事を口にするには、かなり勇気を出しているんだろうな、と思い、三山は微笑ましくなった。

 加藤は照れながら、新しいケータイ電話を出して、

「新しい、写真……撮っても、いいかな」

「どうして私の?」

 三山は少し意地悪っぽい言い方をしてみた。

「これからもお守りが必要かなって……あ、嫌ならいいんだぜ」

「写真だけなんですか……本人じゃ、駄目なんですか……」

「よく聞こえなかったんだけど」

「そうですか、なら聞かなかった事にして下さい」

「俺でもいいのか?」

 加藤の言葉は、はっきりと三山の耳に届いた。