車は地下の駐車場へ入って行った。そのままエレベーターで曽根崎次官の自宅である7階へ昇る。それ程大きなエレベーターではなかったので、捜査員達は三山と二人の捜査員が先に曽根崎と乗り込んだ。残った他の捜査員達は、一旦表に回り階段で一気に7階まで駆け上がった。

 彼等が7階まで駆け上がった時には、曽根崎次官は自室へ入ったところで、玄関前では三山が曽根崎の妻と話をしていた。

 曽根崎の妻は政治家の妻らしく、こういった場合でも毅然とした態度で応じていた。

「任意の同行という事ですが、何時頃まで掛かるのでしょうか?一応、こちらとしましても、午前中からいろいろと予定も入って居りますので」

「申し訳ありませんが、何時までというお約束は出来ません」

 そういったやり取りの中、曽根崎謙造は自室で着替えをしていた……

 と誰もが思っていた。

 確かに着替えはしたが、曽根崎はズボンを穿いただけの姿で机に向かい腰を下ろしていた。

 彼の目は手にしたケータイ電話にあった。彼は何処かに掛けるのかと思いきや、ケータイのデータを全て消去し始めた。

 この程度で官憲の目をごまかせはしないだろうが……

 立つ鳥、後を濁さず、か……

 そう呟きながら、曽根崎は部屋の隅に置かれた小型金庫を開けた。

 その金庫には家人ですら触れた事が無い。中には不動産登記簿や株券等と一緒に現金もあったが、彼はそれらには手を付けず、奥に入っていた回転式の小型拳銃を握っていた。

 弾が装填されてある事を確認すると、曽根崎は躊躇いも見せずに銃口を咥えて引き金を引いた。

 くぐもった発射音が、曽根崎が入った部屋のドア越しに三山の耳へ届いた。

「しまった!」

 曽根崎の妻を押し退け、三山を先頭に捜査員達が部屋へ入ると、骸となった曽根崎謙造が仰向けで倒れていた。