驚いた表情をしながら秘書官が身体を半分ばかり車内へ入れ、後部座席の曽根崎にその事を伝えた。

 曽根崎は少し考える素振りを見せ、腕時計を見た。午前一時を過ぎている。

 この時間にこうして警察が動いたという事は、計画は露呈したのか?

 いや、ならばこちらに何らかの連絡がある筈だ……

 様々な憶測が浮かんでは消えた。

 曽根崎が顔を向けると、不安げな秘書官が指示を待って身動ぎもせずこちらを見つめている。

 曽根崎は自分の席の窓を開けた。

「同行を求めているとの事だが、どういう容疑でかね?」

 三山が腰を屈め、端正な顔を近付けた。

「殺人の共同謀議です。詳しくは本庁の方でお話致します」

 拒む事を許さないという態度が口調に表れていた。

「判った。同行には応じるが、一旦家に戻って着替えたいのだが、構わんかね」

 もっと難癖を付けて来るかと思ったが、意外にも曽根崎は任意同行を承知した。自宅へ戻って着替える位なら構わないだろうと思い、三山は承諾した。

 曽根崎の選挙区は宮城県で、東京で政務を行なっている時は、議員宿舎か神楽坂のマンションで起居している。神楽坂なら目と鼻の距離だ。

 三台の車に前後を囲まれながら、曽根崎の公用車は神楽坂のマンションへと向かった。