気が狂わんばかりに三山の心は乱れた。加藤のケータイが不通になり、無線LANで接続されていた捜査車両とも繋がらなくなってしまった。

 自衛隊が突然乱入して来た時点で、彼女はすぐさま状況を本庁へ伝えようとしたが、一気に情報が集中した為か、本庁自体も混乱をきたしていて肝心の手代木局長に繋がらなかった。

 焦燥感は募り、胸を掻き毟りながら、三山はぼろぼろと泣き崩れていた。

 ケータイが鳴った。

 慌てて手に取る。

「加藤さん!?」

(僕だよ)

 河津だった。

「河津さん……」

(今、現場から知らせが入った。自衛隊が攻撃を中止した。それと、一味の者を確保したようだ)

「身柄の確保が出来たのね!?」

(ああ。確保したのは、彼だよ)

 無事だった。彼女は今直ぐにでも現場へ駆け付けたい衝動に駆られた。

(……彼のところへ行くのなら…車を回すよ)

「ありがとう……大丈夫。やらなければいけない事があるから」

(そうか……。三山)

「ん?」

(いや、いいんだ。僕はこれから柏原さんの後を受けて直接自衛隊に接触するよ。君の方で新たな裏付けが取れたら、直ぐ局長へ回してくれ)

「判った……。河津さん、気を付けて」

 河津から返って来た言葉は無く、代わりに三山の耳に届いたのは、微かに聞こえた含み笑いであった。