「助かりました」

「チヨダの隊長さん、それはここから無事出れた時に言ってくれ」

 草間はにこりと微笑み、隊員達に閃光弾を一斉に投げろと命じた。

 短機関銃の銃弾を全て撃ち尽くしていた瀬尾は、腰のH&Kを抜き、援護射撃の態勢を取った。草間も同じように自動拳銃を抜いた。

 銃口だけを廊下側に出し、引き金を引き続け、閃光弾を握り締めていた三人の隊員が思い切り奥の階段に向けて投げた。

「伏せろ!」

 音響と閃光が辺りを覆った。ホワイトアウト状態になり、激しかった射撃が止んだ。

 加藤が先に立って階段を下りようとすると、瀬尾が

「自分が先に立ちます」

 と言って銃口を真っ直ぐ前方に向けながら階段を降り始めた。

 三階から二階と一気に駆け下りると、それまであちこちで聞こえていた銃声がぴたりと止んだ。

 一階から機動隊員がどっと駆け上がってくる。

「無事か!負傷者はいないか!」

 彼等の声を聞いた加藤は、真実胸を撫で下ろした。

「奴らは?」

「自衛隊はグランドだ。首相命令で奴らは攻撃を中止したようだ」

「ふん、どんくせえ大臣様だこと。てめえで引っ張り出しておきやがって!」

 毒づく加藤に、その場に居合わせた誰もが頷き、込み上げて来る怒りを全身から溢れさせていた。

 加藤はケータイを胸ポケットから取り出し、三山に報告しようとしたが、手にしたケータイは銃弾で破壊されていた。