垣崎が操作するレミントンM700は、正確に狙った相手を捉えていた。

 暗視スコープの中で、何人もの警察官が倒れた。しかし、警察側もSATを先頭に塀を乗り越えて来る。

 雨のように降り注ぐ弾丸をものともせず勇敢な彼等を、垣崎はある種感動の眼差しで見ていた。

 まだまだ日本も棄てたもんじゃないな……

 仲間の死を乗り越え、使命感に全身を滾らせた警察官達。国を護るという同じ立場に居た者だからこそ感じられる相手への畏敬。

 彼等の放つ銃弾であるならば、私は喜んで死のう……

 垣崎が居る部屋に段々と銃弾が集中し始めた。他の部屋でも同様で、幾つかの部屋がSATの放ったグレネードランチャーによって破壊された。

 部下達の抵抗も少しずつ弱くなっているのが、垣崎にも判った。

 残り僅かになった弾丸を込める。

 向かいのアパートから狙撃しているSATの隊員へ銃口を向けた。ボルトをスライドさせようとした時、背後から衝撃を受けた。

 丸太で殴られたような衝撃で、垣崎の身体は吹き飛んだ。

 次の瞬間、立て続けに着弾音が響いた。人間が為せる業とは思えない凄まじい破壊。

 垣崎はその破壊の主が直ぐに判った。20ミリ機関砲弾は、一発でも人体に命中すれば、瞬時に肉体は飛散する。

 廃校となった古い校舎の壁など、薄紙を引き千切るようなものだ。

 警察に20ミリ機関砲など無い。

 来たか……

 自分の身体から大量の血が流れ出しているのが判った。意識が遠のく。垣崎は最後の力を振り絞り、手榴弾の安全ピンに指を掛けようとした。