草間からの報告を受け、深見はすぐさま瓜生に準備完了の合図を送った。

 狙撃班と支援班は、校舎裏門からの突入時に、塀を乗り越える為の梯子を用意し待機していた。

 瓜生は全捜査員の配置確認を終えると、拡声器のスイッチを入れ、車両とマンションの間から身体を覗かせた。

 キーンという拡声器のハウリングがしたと同時に、瓜生の顔面がグシャッという叩きつるような音とともに血煙を立てた。

「課長!?」

「銃撃だ!銃撃して来た!」

 横に居た柏原が、物陰に瓜生の身体を引き摺ろうとする。捜査員達の怒声が一斉に響き、それまでの静寂を打ち破った。

 裏門前で待機していた深見は、銃声が聞こえなかった事から、相手は消音器を装着したライフルを持っていると即座に判断した。

 これは厄介だ。無音で飛来する銃弾は、方向が掴めない。救いは昼間と違うから、射撃時の閃光で射撃手の位置が確認出来るかも知れない。

「狙撃班、ターゲットを確認出来次第応戦!支援班は威嚇射撃はじめ!めくら撃ちで構わん!」

 深見の命令が下るや否や、支援班の撃ち出す銃弾が、校舎へ向けてオレンジ色の糸を曳いた。

 壁に着弾する音。砕ける外壁。飛び散る窓ガラス。怒号が飛び交う中、加藤も学校の塀にへばり付きながら、銃を握り締めていた。

「キャップが撃たれた!」

「こっちも倒れてるぞ!」

 僅かに遮蔽物の陰から身体を出しただけで、銃弾が飛んで来た。