バンの後部ドアが跳ね上げられ、荷台に置かれたノートパソコンに、全員が神経を集中させていた。

 そこに映し出された画像は、これから突入する校舎の見取り図だ。

「草間班長」

 SAT第三小隊A班を率いる草間健吾巡査部長が、声を掛けて来た深見隊長へ向いた。

「君ならば、敷地内に侵入するポイントは何処がいい?」

 草間は即座にある地点を指差した。それを見て肯く深見隊長。

 敷地の地形は、学校の正門前が公園となっていて、一番視界が開けている。道幅も、周辺では唯一車二台分の幅がある。だが、立て篭もっていると思われる校舎などの建物は、校庭を隔てた先にあり、どの地点からも丸見えになってしまう。突入するには最も不都合な地点だ。

 裏門側は、学校を囲む塀と校舎などの建物との間隔が狭く、また身を隠せる箇所も多い。普通に考えれば、誰もが裏門側からの突入がベストだと思うであろう。だが、その分一番警戒している筈だ。

 草間巡査部長が指し示した地点は、正門側の角であった。

「校舎に繋がる体育館と、小さな倉庫があります。正門の正面は道幅が広くなっていますが、北東の角は一番細い私道との曲がり角になっています。立て篭もる者は、一応この方面にも警戒の人員を配置しているでしょうが、裏門側ほどではないと思います」

「うむ。ならば君の班がこの地点から突入してくれ。狙撃班と支援班は裏門側から陽動作戦を行い、突入班の行動をカモフラージュするんだ」

 深見の指示が出、それぞれが配置場所へと散開した。そこへ東綾瀬警察の瓜生課長が近付き、

「深見警部、こっちはいつでもOKだ。手順通り中へ投降を呼び掛ける」

 と、手にした拡声器を見せた。

「了解しました。私のところの突入班が正門側へ回るまで時間を下さい」

 瓜生は判ったと肯き、投光器を備えた機動隊の車両長へその旨を伝えた。