三山から警視庁の特別回線で送られて来たデータを見た手代木の決断は素早かった。

 総監へ報告すると同時に、警備局長へSAT…Special Assault Team(特殊急襲部隊)の出動要請をした。

 警備局長も事案が事案であるだけに、すぐさま同意し総監へ具申。出動許可と同時に特殊銃火器使用の許可も認めた。併せて、警視庁管内で待機していた機動隊の全てを周辺配備に回す事も決定。その行動は過去の重大事犯でも見られなかった程の即断ぶりであった。

 警視庁上層部にすれば、ここ一ヵ月半余りというもの、ずっと自衛隊に先を越されっぱなしで焦燥感が募っていた時であった。首都警備に於いても単に検問警備にばかり人員を割かれてしまい、警察の本務である捜査、逮捕といった職務遂行が出来なかった。

 そういった事もあって、解き放たれた奔馬の如く、彼等はこれ以上無い迅速な決断と行動を取ったのである。

 だが、タイミング的には最悪であった。11月初旬から横浜へAPEC警備の応援を向かわせていたのと、APEC会場付近で起きた銃撃戦の為に、管内にある九つの機動隊と特殊車両隊全てを横浜へ向けて出動させていた。

 その直後に三山からもたされた、テロ組織に繋がるかも知れない一味のアジト発見の報であったのだ。

 本来、SATは警視庁第六機動隊内で三個小隊が任に当たっている。一個小隊が二十名からなる精鋭部隊で、隊員は全国の警察官から優秀な人材ばかりを選抜して編成されている。その二個小隊が横浜へ向かってしまったのだ。

 残された一個小隊は、全員が休暇で自宅待機となっていた。又、この時召集した管内の全機動隊員も同様で、全員急遽自宅から各機動隊本部へ駆け付けた僅かな人数であった。

 勝島の第六機動隊本部に集合したSAT隊員達は、本庁から回された警察無線で総監直々の訓示を受けた。

「頼むぞ!」と言った言葉に、隊員達は皆任務の重大さを改めて実感していた。