柏原が瓜生課長へ挨拶をしていると、署長、副署長、管理官の主だった幹部が道場へ入って来た。

 早速柏原が加藤を伴って彼等の前へ行く。

「本庁の手代木さんから先程連絡を受けました。我々も全力で協力をとは思っているのですが、ご覧の通り非常召集してもこの有様で。先の爆破テロ以降、うちの署からも拠点警備に捜査員を持っていかれましてね」

 改めて道場を見渡してみると、確かに捜査員の数が少ない。ざっと加藤が数えて二十人足らずだった。

 署長の後を受けて管理官が

「先に警邏隊を向かわせて居ります。今のところ、該当地区周辺には異常はありません。それと、地検からの書類も全部届きました。いつでも踏み込めます」

 と、一番新しい報告文を見ながら答えた。

「警邏隊に伝えて頂きたいのですが、絶対に相手側に知られないよう、目立つような動きを控えて貰いたいのです」

 柏原の危惧するところは、行動の秘匿性であった。

「了解しています。警邏隊長にはその旨を充分に伝えて置きましたので」

「ありがとうございます」

「問題は周辺住民の安全確保ですね。普通のガサ入れや犯人検挙とは訳が違うから」

 加藤の言葉に署長達も肯いた。しかし、現実に捜査員不足もあって、果たして隠密裏に住民避難が出来るだろうかという不安はあった。

「とにかく、居る人間でやらなければ」

「では捜査員も全て揃いましたので」

 瓜生課長に促され、署長が道場の前面へ進み出た。

「諸君!……」

 最初の一言に力を込めた署長であったが、これから起こる事の重大さに、どう訓示を述べるべきか暫し言葉を詰まらせた。