思わず唾を呑み込んだ。サーバーのモーター音がはっきりと聞こえる程、二人は一瞬の沈黙の中に居た。

 先に口を開いたのは河津の方だった。

「ひょっとして、これ横浜港?」

「うん……。今、APEC会場付近でテログループと自衛隊が銃撃戦を起こしたってネットに流れているけど……」

「もうニュースで映像が流れているのか。いやyou tube(ユーチューブ)か?」

 河津も言葉に三山が首を振った。

「え?」

「これ銃撃戦の十分前の映像をダウンロードしたもの……彼等はあの場所からGPSで監視映像を撮っていた……メインコンピューターの発信信号を解析したら、この映像が出て来たの。その後、こちらの存在に気付いてブロックを掛けられたけど、何とかその前の分は消されずに済んだわ」

「三山、こいつを至急コピー出来るか?」

「コピーするより、本庁のサーバーへ転送した方が早いわ」

「OK、頼むやってくれ」

 そう言って河津はハーフコートを手に部屋を出て行った。

 河津と入れ替わるかのように、柏原から電話が入った。出先からだと言う。彼も出先でテロの第一報を知り、急いでここへ連絡を入れたようだ。

「今河津さんが本庁へ向かったばかり。柏原さんも向かうんでしょ?」

(いや、私はこのまま動く。三山君、足立と言っていたよな。詳しい場所を教えてくれ)

「場所を教えてって、まさか一人で行くんじゃ?」

(タイミング良く私は習志野から戻っている最中なんだ。本庁へ向かうなら、手前の足立に向かった方がいい。しかも君の話だと相手もこちらの存在に気付いたんだろ?だったらそこを引き払われる前に手を打たないと)

「でも、相手は何人居るのか、」

(大丈夫、たった一人で乗り込む程、ヒーロー気取りにはならないから。所轄の協力を貰うよ)

 三山はその言葉を聞いて多少安心した。柏原からの電話を切った後、三山は一刻も早く加藤に知らせなければと、電話を掛けた。