1970年の亡霊

「いえ。大丈夫。お泊りグッズも用意してあるから」

「おいおい、マジで復帰初日から徹夜か?」

「ここに戻れと連絡が入った時に、川合さんの後をちゃんと引き継がなきゃって思っていたから」

「ディナーを誘うと思っていたが、この分だとOKは何年後になる事やら」

「こんな色気の無い女にお誘いのお言葉を賜るなんて、余程お相手にお困りなのね」

「そりゃあ仕方が無い。ただでさえ女性不毛の警視庁で、しかもその最たる公安だ。職場恋愛どころか出会い自体が宝くじものだからね。せめて次のワールドカップまでにはディナーの夢が叶う事を願うよ」

 緊張感を常に維持し続けなければならない職務の中で、ある意味、男女の際どい会話を交わしていながら、三山自身は余り意識をしていなかった。

 張り詰めていた緊張感を、河津が解そうとしてくれたのだろうと、三山は軽い気持ちで聞き流していたが、河津本人は半ば本気であったようなムードだ。

 居残りの課員が淹れてくれた珈琲も、既に何杯目になったであろうか。

 あら?

 半分に減り、冷め掛けた珈琲を口にしながら画面に見入っていた三山は、現れた数字とアルファベットの羅列に驚いた。

 凭れ掛かっていた椅子から身体を起こし、幾つかのパスワードを打ち込んだ。数秒後、画面に地図が現れ、示した座標は警視庁の建物を記していた。