そんな三山の姿を見た手代木は、

「そんなに力むな。捜査キャップといっても、体調もあるだろうから、君はデスクからの指揮に専念してくれればいい」

 と言った。

「お心遣い、感謝致します」

「うむ。先ず手始めに君にやって貰わなければならないのは、サイバーパトロール課のコンピューターを半年前迄遡って調査して欲しいのだ。特に、外部アクセスの有無、ハッキングの形跡だ。既にNTTをはじめとした通信各社には捜査協力を取り付けてあるから、ケータイを含めた通信記録の全てを洗ってくれ」

「それと、川合俊子のコンピューターに調査データが残っているか、ですね?」

「ああ。捜査に当たって何か意見はあるかね」

「意見ではなく希望なのですが、元本庁機動捜査隊の加藤刑事を捜査員に加えて頂きたいのです。彼も今回の事件では当事者の一人と言えますので」

「その加藤刑事は、今何処の所属かね?」

「千葉の館山署勤務ですが、現在は休職中のようです」

「判った。元々本庁の機捜だったのなら、捜査応援という形で出向させるのはわけないだろう。人事に掛け合って置くよ。それと、実際の現場捜査には、公安の河津君が応援してくれるから、常に連絡を密にして置くように」

「テロ対策課と、ですか?」

「今回の君の復職は、彼からの進言なのだよ」

 三山は、病院を訪れた際に言った河津の言葉を思い出した。

 彼は監査局の手代木局長を動かせばと、言っていたが、彼自ら動いてくれたのだ。