予備役兵とは、現役を退役した軍人が、その後も一定期間、定められた軍事訓練を受け、いざ有事の際には、兵役に就くというものである。

 この予備役制度は、何も今に始まった事では無い。

 通常、各国の兵力数というのは、現役兵の数で比較する。世界第一位の軍事力と言われているアメリカ合衆国軍隊の総兵力は、約百二十万人と言われている。一方、日本の自衛隊は、現在(2008年発表)約二十五万。しかし、予備役である予備自衛官が召集されれば、その兵力は三十万を優に超す。だが、この数字は諸外国と比べると圧倒的に少なく、他国は現役兵に対し数倍の予備役を有している。特に、緊張高まる朝鮮半島に於ける予備役兵の割合は、北朝鮮、韓国共その比率は高い。北朝鮮などは、予備役兵が四百万を超える。近年、政府は予備自衛官増加の法案を通し、拡充政策を取り始めた。

 過去、この予備役制度を最も有効に活用した人物と国は、ヒットラーと彼が率いたナチスドイツであった。

 第一次世界大戦の敗北で、ドイツはベルサイユ条約により、その持てる総兵力を十五万以下と制限された。ヒットラーがナチス党を率い、政権を取ると、予備役制度に目を付けた。条約では、現役兵の制限は設けてあったが、予備役には一切触れられていなかったからである。

 ヒットラーはこの盲点を衝いた。対外的には、従順にベルサイユ条約を批准しているように見せ掛け、近隣諸国を油断させた。

 当時の英仏は、ヒットラーの台頭を危惧してはいたが、ベルサイユ条約で身動きが取れなくなったドイツに、軍事行動を起こす力は無いと見ていたのだ。

 ところが、ドイツは1939年初頭の時点で、二百万とも言われる予備役兵を持っていた。第二次世界大戦は、この二百万の予備役兵が会戦の火蓋を切ったとも言えるであろう。

 2010年、日本は予備自衛官の動員を決定した。