垣崎明子から出されていた夫垣崎剛史の捜索願は、10.1テロのお陰で、捜査がなかなか捗っていなかった。一時は、千葉県君津海岸で発見された首無し死体が彼ではないかと思われたが、その後の調査で別人だと判明した。担当を命ぜられた堀内警部補は、部下の黒田巡査部長と一緒に他の捜査の合間を縫いながら、垣崎剛史の足跡を追い掛けた。
堀内の見立ては、垣崎が何らかの事件に巻き込まれたのではないかというものだった。
妻明子から捜索願が出されて二ヶ月、丁度練馬の陸上自衛隊駐屯地へ、10.1テロ後の捜査応援で行く事があった。堀内は、垣崎についての情報を得られないかと、彼が所属していた教育課を訪れた。幹部職員の何人かに垣崎剛史についての話を尋ねたが、板橋署で聴取した妻明子の話と同じで、得るものは特に無かった。
もし、このまま諦めていれば、その後何ら進展は得られなかったであろう。
それは偶然であった。
応援配備を解除され、明日から再び板橋署で通常勤務に戻るという日、堀内は駐屯地内の人事課へ顔を出した。それは捜査とは全く関係無かった。妻の親戚で香川という者が、偶然練馬駐屯地で勤務していた。それまで特に親しい付き合いがあった訳では無かったが、今回の応援配備で顔を合わす機会が出来、言葉を交わすようになった程度である。この時にしても、単に挨拶で顔を出したというだけであった。
「雄治さん、明日からまた署へ戻ります」
「ホリさん、今度は外で一杯やりながら話しましょう」
と、そんな会話を二言三言交わし、部屋を出ようとした時である。
堀内はパソコンの画面に映し出された写真と名前を目にし、食い入るように見入ってしまった。
堀内の見立ては、垣崎が何らかの事件に巻き込まれたのではないかというものだった。
妻明子から捜索願が出されて二ヶ月、丁度練馬の陸上自衛隊駐屯地へ、10.1テロ後の捜査応援で行く事があった。堀内は、垣崎についての情報を得られないかと、彼が所属していた教育課を訪れた。幹部職員の何人かに垣崎剛史についての話を尋ねたが、板橋署で聴取した妻明子の話と同じで、得るものは特に無かった。
もし、このまま諦めていれば、その後何ら進展は得られなかったであろう。
それは偶然であった。
応援配備を解除され、明日から再び板橋署で通常勤務に戻るという日、堀内は駐屯地内の人事課へ顔を出した。それは捜査とは全く関係無かった。妻の親戚で香川という者が、偶然練馬駐屯地で勤務していた。それまで特に親しい付き合いがあった訳では無かったが、今回の応援配備で顔を合わす機会が出来、言葉を交わすようになった程度である。この時にしても、単に挨拶で顔を出したというだけであった。
「雄治さん、明日からまた署へ戻ります」
「ホリさん、今度は外で一杯やりながら話しましょう」
と、そんな会話を二言三言交わし、部屋を出ようとした時である。
堀内はパソコンの画面に映し出された写真と名前を目にし、食い入るように見入ってしまった。



