自分の上司である南雲課長よりも上級職に位置する手代木から、捜査協力の依頼を取り付けられれば、堂々と自衛隊を捜査出来る。

「さて、君の話だとサイバーパトロール課の全コンピューターを調べた方がいいとの事だが、やはりそれは変死した川合俊子捜査官の件が関係しているからかね?」

「ええ。川合俊子があるサイトを調査して居りましたが、その件を知っていたのは、ごく僅かです。ですが、何者かに調査をしているのが漏れたと思われます。それと、彼女自身のコンピューターに、まだ調査データが残っているかも知れません。ハッカーに侵入され、彼女が調べ上げたデータを消される可能性も考えられます」

 川合俊子の死から日は経っている。既にハッカーの手で、データをウイルスなどで消されている可能性は高い。だが、改めて調べる事で、その痕跡を見つけられるかも知れないし、遡れば相手が見えて来る。

「判った。早速手を打って置こう。その辺の事も含めて、一度三山警視と会わなければならないな。彼女の件を人事に諮らなければならないし、忙しくなりそうだ。他に何かして置く事はあるかね?」

「南雲課長へ一言仰って頂ければ、後は特に」

「うむ。伝えて置く」

「では、私はこれで」

「河津君。この件が片付いたら、人事局長に君の処遇を考えるよう伝えて置くよ」

「ありがとうございます」

 手代木に頭を下げた河津は、

 三山、手は打ったぞ……

 と、心の中で思いながら、部屋を出て行った。