「私が注目したのは、巡視船『うねび』が見つけた不審船でして。加藤刑事は海上保安庁にまで問い合わせて、当日の航海日誌や保安官からの証言を得て居られる。こちらの具申書は、本部では取り上げられなかったのですか?」
「不審船といっても、それが自衛隊の訓練用ゴムボートだったものですから、それが判った時点で捜査対象外です。尤も、それが本当に不審船だったとしても、私の意見具申など、あの課長は端から受け付けなかったでしょうが、あ、いやこれはすみません。今の話は聞かなかった事にして下さい」
自嘲気味に言った加藤を見ながら、柏原はほくそ笑みながら、
「心配要りません。それはそうと、ここに面白い報告が書かれているのですが、『うねび』の保安官は、このボートから何か棄てられたのを見たと言っているようですね」
「その件について、私も電話で確認しました。棄てたものが何であるかまでは判らなかったが、水柱を確認しているんです。それで、自衛隊の指揮官らしき人物にその事を尋ねると、隊員が訓練の為に海中へ飛び込んだのを誤認したのでないか、とそう言われたそうです」
「仰る通り、そのやり取りの供述も資料添付されていますね。ところで、この具申書には最後にこう書かれてある……その夜、巡視船が遭遇したゴムボートは、本当に自衛隊の訓練に使用されたものなのか?と」
「はい。そう書いた理由は、その後、陸自の方に確認を取った際、はっきりと認めて貰えなかったからなんです。何でも、対テロ特殊訓練だから、その訓練は秘密裡に行われたものであろう、だから詳細は不明だ、の一点張りで」
「そう言って来たのは防衛省?」
「いえ、東部方面司令部の内務班とか言っていたような……」
「不審船といっても、それが自衛隊の訓練用ゴムボートだったものですから、それが判った時点で捜査対象外です。尤も、それが本当に不審船だったとしても、私の意見具申など、あの課長は端から受け付けなかったでしょうが、あ、いやこれはすみません。今の話は聞かなかった事にして下さい」
自嘲気味に言った加藤を見ながら、柏原はほくそ笑みながら、
「心配要りません。それはそうと、ここに面白い報告が書かれているのですが、『うねび』の保安官は、このボートから何か棄てられたのを見たと言っているようですね」
「その件について、私も電話で確認しました。棄てたものが何であるかまでは判らなかったが、水柱を確認しているんです。それで、自衛隊の指揮官らしき人物にその事を尋ねると、隊員が訓練の為に海中へ飛び込んだのを誤認したのでないか、とそう言われたそうです」
「仰る通り、そのやり取りの供述も資料添付されていますね。ところで、この具申書には最後にこう書かれてある……その夜、巡視船が遭遇したゴムボートは、本当に自衛隊の訓練に使用されたものなのか?と」
「はい。そう書いた理由は、その後、陸自の方に確認を取った際、はっきりと認めて貰えなかったからなんです。何でも、対テロ特殊訓練だから、その訓練は秘密裡に行われたものであろう、だから詳細は不明だ、の一点張りで」
「そう言って来たのは防衛省?」
「いえ、東部方面司令部の内務班とか言っていたような……」



