1970年の亡霊

「死んだ三枝君は、その男と争った時に、随分と格闘慣れした人間だったと言っていたわ。私もそれは同様に感じたの。だから、銃撃された後、多少は関連性を考えなかった事も無かったけれど、やっぱりその時点では理由が思い付かなくて」

「こう考えたらどうかね。相手は、かなり前から君が相談を受けていたと思い込んでいたと……」

「そういう可能性はあるかも」

「サイバーパトロール課のパソコンのセキュリティはどうなっている?」

「本庁の中でも、一番ハッカー泣かせだと思う」

「外部から監視されたりとかは?」

「まず無理ね、と言いたいけれど、厳密に言ったら100%安全とは言えないでしょうね」

「川合俊子がサイトを調査したり、検索している内容が外へ洩れる可能性はゼロではない……それは君の事件が雄弁に物語っている。それに、彼女の死を殺人として考えるなら、尚の事洩れたと考えるべきだ。自衛隊ならそれも容易い……」

 三山は無言で肯いた。

「でも、突然どうしたの?」

「何が?」

「だって、この前はこの件には乗り気じゃなかったのに、今日はやたら熱心に尋ねて来るから」

「今、俺は爆破テロを追い掛けている」

「テロ対策課だもの、当然よね。それとこれとどう関係があるの?」

「共通のキーワードがある……。それは自衛隊だ」

 河津の思い掛けない言葉に、三山は両目を見開いたまま、息を呑んで身を硬くした。