「本庁の特別捜査官だった川合俊子が、事故死ではなく何者かに殺された、そして、それに自衛隊が間違い無く絡んでいるという事なんだな?」

「三山警視は、自分が襲撃された一連の事件から、そう思っています」

「それと、今回のテロをどう結び付けたんだ?」

「さっきも言いましたが、根拠はありません。こうして柏原さんと話をしていて、ふと思い付いただけです。三山警視の事件と、テロとは別でしょうが、自衛隊という固有名詞が出たものですから、当て嵌めて考えただけですけど」

「本当に、とっぴな話だな」

 そう言いながら、柏原は呆れるふうでもなく、真剣な面持ちで河津の話を吟味していた。

「しかし、お互いに北が実行犯とは思っていない。別にテログループが存在していると考えている。だが、手掛かりはゼロ……。こりゃあ、とっぴだろうが何だろうが、藁にも縋る思いで掴むしかないのかな。それで、その線で動くとして、俺の方はどう動けばいい?」

「柏原さんは、工作員の遺体をもう一度調べて下さい。それと、マークしていた工作員達の、テロ前後の動き。奴らが本当に実行犯なのかどうかを我々の手で確認しなければなりません。自衛隊側からの報告は全て無視して」

「判った。そっちはどう動く?」

「もう一度爆破テロの現場を洗い直します。それと、対テロ特殊部隊と内務班……」

「一番厄介で危ない橋だな……」

 河津はぴたりと口を閉ざし、不気味な笑みを見せた。これまでのキャリアを失うだけではなく、下手をすれば社会から抹殺される可能性もある。

 柏原は、腹を括る本当の意味を知った。