病室に訪れた河津を見た三山は、その姿に驚いた。
「その顔どうしたの?血が出ているじゃない」
「今の東京で夜の一人歩きをしたら、こういう目に遭うサンプルさ……」
河津は不機嫌そうに答えた。
「突然呼び出したりしたから、機嫌悪くした?」
「いや……」
不機嫌そうにしている理由が、まさか横に居る加藤のせいだとは、三山は気付いていない。
河津にしてみれば、久し振りに三山と仕事を離れて話が出来ると思っていたのに、傍らに見ず知らずの男が座っているのだから、心中は穏やかでは無い。
「俺は居ない方がいいか?」
加藤は河津の視線に、好意の欠片も無い事を直ぐに察した。
「どうして?加藤さんだって関係ある話なんだから一緒に居て下さい」
「用は何だ?」
「そんなに苛立たないで」
「別に苛立ってなんかいないさ」
三山は、やっぱり河津を呼ぶんじゃなかったと後悔し始めた。
三山と河津は、大学時代から付き合いがあった。尤も、同じゼミだったというだけで、特に深い関係だったという訳では無い。ただ、河津の方は、昔から三山に好意を抱いていたようで、三山もその事を薄々察してはいた。
「君から呼んだんだ。早いとこ用を済ませてくれ」
二人のやり取りを傍らで聞いていた加藤は、河津という男をこの先、好きになれないなと思った。



