1970年の亡霊

 このところの河津欣嗣は、官舎のある松濤に帰れずじまいだった。

 連続爆破テロ事件の捜査で、公安は全セクションが動いていたからだ。

 そんな最中、彼のケータイにメールが入った。

 送信者を見ると、意外な人物からだった為、普段なら絶対に職務中に返信などしないのに、彼は急いでメールを返した。

 次に来たメールには、

『会えませんか?』

 と書き込んであった。

 河津は腕時計を見た。

 今、河津が主に内偵をしているのは北朝鮮関連だったが、彼自身は今回の爆弾テロには無関係だろうと思っていた。

 理由は、中国大使館も狙われたという点である。

 数少ない援助国に爆弾テロを敢行する程、彼等も愚かではない。

 9.11に繋がるアルカイダなどの国際テロ組織とも、今回は違うような気がしていた。

 今の日本が、彼等に狙われる理由が見当たらない。

 イラクに自衛隊が派遣されていた頃ならば、まだ考えられる。

 河津はそういった分析を、爆破事件直後、直ぐさま上司である南雲に提出したが、然程真剣には聞き入れて貰えなかった。

 無駄な内偵をする位なら、彼女と久し振りに会う方が有益だ。二時間後に会おうとメールを打った。