1970年の亡霊

「誰かさんに仕込まれたせいかな」

「間違っても俺じゃねえな。あんたをデカとして最初に認めたのは、前嶋さんだ」

 二人は共通の元上司を思い浮かべた。

 特に三山にとって、前嶋という元上司は刑事として最初に拝命した時の係長であった。

 その元上司は、夏を迎える前に癌で他界している。

「デカ辞めちまうのは、いつでも出来る……て、前嶋さんに言われちまうかもな」

「うん……私もこのままやられっ放しじゃ悔しいもの」

「よっしゃ。なら、早いとこ病院とおさらばしなきゃ」

「おさらばって、加藤さん、まだ抜糸も済んでいないのに」

「ただ問題がある」

「問題ですか?」

「俺達には捜査権限が無い」

「所轄がって事ですか?」

 加藤は瀧本の顔を思い浮かべた。

「俺達が捜査協力をするって言っても、あのコチコチの叩き上げじゃあ、どうにも融通が利かんだろう」

 コチコチの叩き上げという言葉が、加藤の口から出るとは思いも寄らなかったものだから、三山は思わず笑ってしまった。

 しかし、その笑いも直ぐに消えた。