1970年の亡霊

 手術室に運ばれて来た加藤を最初に見た医師は、ひょっとしたら助からないかもしれないかと思った。最初に受けた左鎖骨付近の刺し傷は、深さが四センチもあり、もう少しで動脈を切断するところだった。

 左腕の傷は、上腕二頭筋を切断し、更には肘の腱をも切断されていた為、仮に命が助かったとしても、左手の自由は失うだろうと診断した。

 それ以外にも、全身に計七ヶ所の刺し傷と切り傷があり、その縫合総針数は七十針を越えた。

 それ程の傷を負いながら、

「余程頑丈に出来ているんですね。普通の人なら即死していてもおかしくない」

 とまで医師に言わせる程、加藤の快復力は早かった。

 縫合された傷の痛みで意識が戻った加藤の目に、青白い顔をした三山が映った。

「ん?あんた、寝てなくてもいいのか?」

「少なくとも、今の加藤さんよりはぴんぴんしている」

「どれ位眠っていた?」

「私の時よりは早起きだったわ。それより、加藤さんと私の血液型、同じだって知ってた?」

「いや。て、まさかあんた、俺に血を?」

「まさか。幾ら私が不死身な女でも、まだ人に血を上げられる程、治ってないわよ」

「だよな」

 二人の間につかの間の安息が訪れていた。