1970年の亡霊

 目の前に横たわる死体から、夥しい血が流れ出ている。

 その死体を調べる私服刑事達。

 ジャンパーの上から着込んだ防弾チョッキ姿が、加藤には何だか滑稽に見えた。

 今頃来やがって……

 あんたらを撃つ人間は、もうあの世へ行ったぜ……

 刑事達の中に、葛西東署の瀧本係長が居た。

 ストレッチャーに乗せられた加藤へ、瀧本が一瞥をくれながら近付いて来た。

「病院のまん前で命拾いしたな」

「悪運は昔から強いものでね」

 そう言い返してはみたが、正直そんな余裕など無い程、怪我の状態は思わしくなかった。

 血で真っ赤に染まったワイシャツを看護師が鋏で切り裂いて行く。

 当直の医師が、大至急手術の用意だと喚いていたが、加藤の意識はその言葉を聞きとめる前に途切れた。