1970年の亡霊

 警備員が病室の中へ入ると、男が窓を背にして仁王立ちになっていた。

 刺された加藤は、左肩を押さえ、肩膝を着いている。

 誰かが110番をしたのであろう。

 遠くからパトカーのサイレンが近付いて来る。

 一台、いや更に何台かがこっちへ向かって来ている。

 男が少しずつ窓際に後退した。

 後ろ手に窓へ手を掛け、男はゆっくりと開けた。

 加藤は男の目論見を察し、隙を見て飛び付こうと身構えた。

 加藤が飛び掛かろうとした瞬間、男の身体は、素早く窓枠を乗り越え、そのまま漆黒の闇へと消えた。

 加藤が慌てて窓へと駆け寄る。

 下を見ると、驚いた事に、男は立ち上がろうとしていた。

 3Fから飛び降りて、何事も無かったかのように立ち上がる男。

 下はコンクリートなんだぜ!

 奴はターミネーターか?

 驚いている暇は無い。

 加藤は警備員を促して、逃げた男を追った。