男は押入れからバックを引っ張り出し、中身を確認した。

 今度はしくじる訳には行かない。

 確実に消さなければ……

 奴等はまだ気付いていない……

 しかし、何処をどう辿って嗅ぎ付けられるか判らない。

 男は、バックの中を暫く見てから、銃ではなくナイフを手に取った。

 バックを元の場所へしまうと、男はクローゼットから目立たない服を選んで着替えた。

 部屋を出る前に、男は短い電話を掛けた。

「今から向かいます。今度は間違いなく始末いたします」

 そう言って電話を切ると、暫く考えてからケータイ電話を机の上に置いて行く事にした。

 他に身許が判ってしまう物は無いか、念の為に確認し、男は部屋を出た。

 三十分後、男の姿は葛西行きの電車の中にあった。