これらの動きがあった少し前、警視庁サイバーパトロール課下山課長の許へ、一人の男が現れた。

「約束の報酬です」

 と言ってその男は、菓子折り大の小包を渡した。

 下山課長は眼鏡の奥で目を細め、それを受け取った。

 男と別れた後、下山は菓子箱の中身を確認したい衝動に駆られていた。

 しかし、何処に人の目があるか判らない庁内でそれをする事は、愚の骨頂だ。

 中身が想像通りなら、当分は銀座通いの資金に困らないだろう。

 突然執務室へ部下の一人が血相を変えて飛び込んで来た。

 慌てて菓子箱を机の下へ隠そうとした。

 ノックもせずに入って来た部下を叱る間も無く、

「A館で爆発事故が発生しました!」

 と、その部下が怒鳴った。

 その言葉に驚いて立ち上がった下山が、口を開こうとした直後、部屋全体を閃光が被い、大音響とともに下山の肉体は四散した。