その日、荒木が向かった先は、これまで出向いた所とは違っていた。

 指定された荷物の届け先は、政府の党本部であった。

「支援団体からの差し入れを届けると、先に伝えてある」

 と、SIMインターナショナル側から前以って言われていたから、荒木は特に何も心配はしていなかった。

 実際、手渡された小包を党本部へ届けた際、簡単な身体チェックを受けただけであった。

 その日の配送はその一ヶ所だけであった。

 帰りの車に揺られていると、運転手は普段と違う道を走っている事に気付いた。

「これから何処へ?」

 荒木の質問に、運転していた男は、

「新しい宿舎へ移って頂きます」

 と言うだけで、その後は一言も喋らなかった。

 高速道路を使わずに下の道路を走った車は、東京と千葉の県境を越えて、習志野の山中へと入って行った。