交通管制課事務長、中山博一は、そういう物が届けられるという報告を事前に聞かされていなかった為、各担当者に確認をしてみた。

 届けられた小包に書かれてある送り主のシステム管理会社は、確かに出入りの業者である。

 その点で怪しいところは無かった。
 
 中山は、小包に印刷されてあったシステム管理会社の電話番号に掛けてみた。

 相手は直ぐに出た。

(昨日の深夜にお電話を頂きましたので、恐らくその辺の連絡が現場にまで届いてなかったのではないでしょうか。こちらの納品書には、交通管制課の枝本様名で発注となって居ります)

 枝本という職員は確かに在籍している。本人を確認してみると、今日は非番だという事が判った。前日は夜勤であったというから、深夜にシステム上のトラブルでもあったのであろうか。その連絡引継ぎがきちんと為されていなかったのであろう。

 中山はその小包を交通管制センターのメンテナンス課へ届けた。

 五分後、危機管理に於けるミスの重大さに気付く間も無く、中山博一は眩い閃光と爆発の衝撃の中で意識を失っていた。

 直後、東京都心部の交通管制システムは完全にストップ。主要幹線道路は信号、ETCシステム、カメラ等の機能が働かなくなった。