粘着性の性質と一定下での安全性、取り扱いの易しさから、その爆薬は、世界各国の特殊部隊で一番ポピュラーに使用されているものであった。

 一般にC4(シーフォー)と呼ばれるそれは、専用の信管を装着し、一定の信号を送信しない限りは爆発をしない。

 それでいて、その爆発力は通常のダイナマイトなど問題にしない位強力だ。

 しかも、粘土のように軟らかい為、形状を自由に変える事が出来、壁などにも付着させられる。

 仕掛ける側にすれば、これ程使い勝手のいい爆薬は無い。

 爆薬に詳しい者でない限り、目の前にそれを見せられたとしても、それが爆薬だとは気付かれないであろう。

 そのC4を二重底に仕込まれた小包が、警視庁A館の交通管制課に持ち込まれた。

「システム機材を納入している業者の者です。緊急という事でしたので、直接代替部品をお持ち致しました」

 そう言って窓口に現れた女は、

『倉田真理恵』

 と、来訪者名簿に名前を書いて立ち去った。