「あんた、一番いい時期に来たよ」

地元の人にそう言われて来てみたが、本当にそうだと感じた。

特に早朝に見るラベンダー畑は、幻想的だった。

朝露が、降り注ぐ太陽の光りに反射し、薄く煙る朝靄の中で浮かんで見えた。

真っ直ぐに細長く伸びた茎いっぱいに花を咲かせた様は、何と無く里佳子に似ていた。

一輪だけだと、そう目立たない花だけど、こんなにも集まるとなんて素晴らしい風景を見せてくれるんだろう。

夢中でカメラのシャッターを押し続けた。

僕は、予定を延ばして数日この地に滞在する事にした。

毎日ラベンダー畑を見ていると、花畑の様子がちょっとずつ変化して行く事に気付いた。

一日だけしかいなかったら、気付かなかったな……

何だかものすごく得した気分になり、ラベンダーの移り行く様を撮り続けた。

後から振り返れば、この時に僕は見つけたのだと思う。

という事は、里佳子が僕を導いてくれたって事になるのだろうか。

出来上がった写真の中で、一番のお気に入りを僕は里佳子のご両親へ送った。

添えた手紙に、

『里佳子がいっぱいいました……』

と書いて……。