彼の家に着く頃には、雪はすっかりやんでいた。
黒い雲の合間から、未完の月が現れる。
マンションのインターホンを押してしばらくすると、鍵の開く音とともにドアが微かに開かれる。
私はそのドアを引き、目の前に立つ背の高い彼を見上げた。
長い前髪の下から覗く、くっきりした鋭い二重の目は静かで何も読みとれない。
整いすぎた顔立ちというのは彼のようなことを言うのだろう。
通った細い鼻筋。薄い唇。綺麗に整えられた真っ直ぐな眉。
それらがバランスよく配置されている。
「響……さっきは怒って出て行ってごめんね」
謝罪には全く反応せず、踵を返した彼はリビングへ向かう。
私はブーツを脱ぎ、彼のあとに続いた。
広いのにあまり家具が置かれていない、殺風景な部屋。
彼はフローリングの床に座り、二人掛けのソファを背もたれにする。
「今までどこにいた?」
立ったままの私へ鋭い視線を向け、彼は無愛想に聞いた。
「えっと……、遼の家」
「またあいつの家にいたのか。わざわざ何しに行ってんの?」
怪しむような眼つきで、響は私を見上げている。
「べつに何も……。ご飯作ったり、テレビ見たり」
「はあ? 飯作るって……何それ。なんで俺以外に作るんだよ」
「え、駄目?」
焦った私は、彼のすぐそばに座り込んだ。
「だって遼は、お兄ちゃんみたいなものだよ?」
黒い雲の合間から、未完の月が現れる。
マンションのインターホンを押してしばらくすると、鍵の開く音とともにドアが微かに開かれる。
私はそのドアを引き、目の前に立つ背の高い彼を見上げた。
長い前髪の下から覗く、くっきりした鋭い二重の目は静かで何も読みとれない。
整いすぎた顔立ちというのは彼のようなことを言うのだろう。
通った細い鼻筋。薄い唇。綺麗に整えられた真っ直ぐな眉。
それらがバランスよく配置されている。
「響……さっきは怒って出て行ってごめんね」
謝罪には全く反応せず、踵を返した彼はリビングへ向かう。
私はブーツを脱ぎ、彼のあとに続いた。
広いのにあまり家具が置かれていない、殺風景な部屋。
彼はフローリングの床に座り、二人掛けのソファを背もたれにする。
「今までどこにいた?」
立ったままの私へ鋭い視線を向け、彼は無愛想に聞いた。
「えっと……、遼の家」
「またあいつの家にいたのか。わざわざ何しに行ってんの?」
怪しむような眼つきで、響は私を見上げている。
「べつに何も……。ご飯作ったり、テレビ見たり」
「はあ? 飯作るって……何それ。なんで俺以外に作るんだよ」
「え、駄目?」
焦った私は、彼のすぐそばに座り込んだ。
「だって遼は、お兄ちゃんみたいなものだよ?」