玲の姿がぼやけていた。
自然と涙が溢れ、止まらなかった。
そして、歌い終わった玲自身も、その窪んだ眼から幾く筋かの涙を流していた。
そっと私に那津子がハンカチを差し出した。その那津子も目頭を押さえている。
「ぼくも、この人みたいな歌を歌いたい……」
歌えるさ……
そう言って上げようとと思ったのに、私は声も出せなかった。
「そうだ!」
突然、部屋の隅に居た浅倉が声を上げた。
「玲にRAI…これって、何かの暗示じゃないっすか!」
「……?」
「香坂玲もいい名前だけど、玲ちゃんもミュージシャン名をRAIにしちゃえばいいんだ!」
悪くない。奴の頭にしては。
「あっ、でもローマ字表記にすると、玲ちゃんはREIになっちゃうか」
「カタカナにすればいいんじゃないか?」
深海魚が目を真っ赤に腫らしながら、ぼそっと呟いた。
「それ、頂き」
「お前ら本人に断りもしないで勝手に決めるな」
「本人といいましても、レイ・チャールズはもうとっくに天国の住人になってますけど?」
「そっちのレイじゃないよ。こっちの玲ちゃんだ」
すると玲は承諾のピースサインを突き出した。
「二人のレイか……」
心也が目を閉じたまま言った。そして、私の中で新しいフレーズがまた一つ浮かんだ。



