新しい歌


 深海魚が手配してくれたワゴンに乗って、私達は二週間の合宿をする為に久里浜へと向った。

 運転席には、自分の指定席はここだと言わんばかりに浅倉が座った。

「遺言、ちゃんと済ましたか?」

 懐かしいジョークが心也の口から聞こえた。

 死んだベースのヒロシが毎回車に乗り込む時に言っていたジョーク。

 浅倉も敏腕プロデューサから昔のボウヤに戻ったかのようで、寧ろその事を喜んでいる。

 車に楽器を積み込み、メンバーが身体を寄せ合うようにして乗り込む。こうして車に揺られるのは何年ぶりになるだろうか。

 ツアー気分で車に揺られ、夕方になって愛光園に着いた。

 玲が門の所まで来て出迎えてくれた。

 挨拶をする間もなく浴びせられた彼女のマシンガントークで、私達はすっかり玲の世界に引きずり込まれた。

 還暦間近なオヤジ連中が、揃って相好を崩している様は、微笑ましいというより腑抜けにされた木偶のようだ。

 合宿をするようになって、私は初めて玲の日常というものを知った。

 初日がたまたま彼女のリハビリだったから、私達も付き合う事にしたのだが、想像以上にハードなリハビリメニューに驚いた。

 トレーナーから、

「皆さんお年ですから余り無理なさらないで下さい」

 と言われたが、玲が汗だくになってメニューをこなしているのを見たら、リタイアなど出来なくなってしまった。

「おっわりぃ!」

 一通りのメニューをこなした玲が、嬉々とした顔をし、高々とピースサインをした。