「赤色の薔薇……花言葉、知ってた?」

 那津子がそっと耳元で囁いた。知らないと頭を振る。

「そうよね、貴方が知っている訳無いわよね」

 何を言われているのか私にはさっぱり判らず、無駄とは思いつつも浅倉に聞いてみた。結果は、やはり奴も知らなかった。

「浅倉さんからもプレゼント貰ったんだ」

 そう言って玲が私の手に触れさせたのは、一枚のCDだった。

「この前のが漸く出来たんすよ。今日に間に合って良かった」

「ぼくと風間さんが一緒に歌った曲も入ってるんだって。ねえ、せっかくだから聴こうよ」

 那津子がCDプレイヤーをセットし、流し始めると、そこに居合わせた職員や玲以外の子供達が歓声を上げ、場が一気に盛り上がった。

 パーティの間中、玲は私の傍から離れず、しきりに音楽の話をした。と言うよりも、私にせがんで来た。

 私が音楽を志すきっかけになった話。

 集めたレコードの数々。

 好きなアーティストの名前。

 そして、曲。

 そういった事を玲は矢継ぎ早に質問し、私が答える度にうんうんと何度も頷いた。

 この時、私は玲に彼女と同じ名前を持つ一人の今は亡き偉大なアーティストの話をした。

「今度、彼のアルバムを聴かせて上げるよ」

「うん、約束だよ」

「判った」

「じゃあ、指切りして」

 初めて触れた玲の小指は、折れそうな程に細かった。