デビュー当時の私達は、派手な衣装を着せられて、既に流行遅れになりつつあったマッシュルームカットのヘアスタイルという、典型的なGSスタイルで売り込まれた。

 殆ど終焉を迎えていたGSブームに、ロンリーハーツは最初から乗り遅れていたのだ。というより、プラットホームにも立っていなかったのかも知れない。

 そんな私達の名前が、曲がりなりにも音楽シーンを賑わすようになったのは、オリジナルをやるようになってからで、音楽的にも結構斬新な試みをしていた。

 尤も、自分達でそう思っていただけで、実際はそれ程目新しい事ではなかった。ビートルズという偉大なる先駆者と比較すれば……。

 檜町のスタジオは、デビュー以来レコーディングの度に通いつめた場所だ。

 死んだ佐藤などは、ビートルズに引っ掛けてここを『アビィ・ロード・スタジオ』と呼び、悦に入っていたものだった。

 そのスタジオへ、私は向っている。

 ロンリーハーツが解散した後も、何度なくこのスタジオで仕事をしているのに、どういう訳かこの日に限って、遥か昔の感傷に浸っている自分が居た。

 きっと、そこで久し振りに会う仲間のせいかも知れない。

 再会する場所によって、人は昔の想い出を箪笥の奥から引っ張り出すのだろうか。

 黴の生えた感傷を虫干しさせるには、これから遭遇する太陽の光りが、少しばかり強過ぎるかも知れない。

 その太陽に、イカロスの如く焼き尽くされる事を私は望んでいた。