「陽介、俺にも手伝わせろ」

 心也がいきなりそう言って、話の中に入り込んで来た。

「手伝って貰うのは構わないが、まだ具体的には動き出していないよ」

「陽介にしちゃ、のんびり構えてるな」

「構えている訳じゃないさ」

「まあいい。とにかく、この香坂……」

「玲……。とんでもない子だろ」

「なっちゃんの口癖が、これ程ピッタリ来たのは初めてだな」

「ああ」

「陽介、曲を書け。最近、ちゃんとしたもの、書いてないだろ?この子なら、陽介の眠っているものを覚まさせてくれるかも知れないぜ」

「覚ますか覚まさないかは判らないが、書くつもりだよ」

 私がそう言うと、深海魚も浅倉も、ほう、というような表情をした。

 考えてみれば心也が言うように、ロンリーハーツを解散してからこの方、きちんと曲らしい曲を書いていなかった。

「一度、この子をスタジオに呼んでみないか。そこでシン、お前も生で香坂玲を聴いてみろ。あの子の歌を聴いて、お前が言うような眠っていたものが覚めてくれたらと、俺も考えている」

「お前の曲に、俺も入っていいか?」

「こっちから頼むよ」

 その夜、心也は初めてしかめっ面を崩した。

「香坂玲プロジェクト、出発進行!」

 コロナの瓶を高々と上げながら、浅倉は陽気な声を張り上げた。