翌日、私は何ヶ月ぶりかで那津子に電話をした。

「玲ちゃんの事を君からいろいろと聞きたいんだけど、時間はあるかい?」

(夜でも構わない?)

「俺は夜型だから、何時でもいいが」

(じゃあ、八時で。場所は?)

「久里浜なんだろ?都心に出て来るのは大変だろうから、俺の方が近くまで行くよ」

(それだったら、ちょっとデート気分で夜景が見えるところがいいな)

「判った。この前、浅倉の仕事で久し振りに財布がリッチになったから、ベイサイドタワーにしようか」

 私は、横浜のみなとみらいにそびえる、高層ホテルを待ち合わせ場所に指定した。

(ロビーで待ち合わせる?)

「いや、アマポーラというバーがあった筈だから、そこにしよう。最上階のバーだからすぐに判ると思う」

 電話越しにも、那津子の声が華やいでいるのが判った。と言うよりも、私自身が柄にもなく浮かれていた。

 けれど、それは彼女と久々にデート気分を味わうという意味からではなかった。もし、私の心の中を那津子が覗いたら、きっとがっかりするに違いない。

 私の華やいでいる気分のそれが、あの子の事から来ているものだと知ったら。