「ねえ玲ちゃん、もしよ、もしも玲ちゃんが多くの人に知られるようになったら、想像も付かない事がいっぱい起きてくるの。妬みとか、やってもいない事を言われたりとか。私達があなたを守って上げたとしても、最後は玲ちゃん自身が自分を見失わないでいる事が大切なの。判るわよね?」

 玲は、那津子の腕の中に顔を埋めたまま、何度も小さく頷いた。

「そう……じゃあ、私はどんな事があっても玲ちゃんを守って上げるわ」

「よし、ならば決まりだ。浅倉、暫くはきれいなお姉ちゃんのとこへは行けないぞ」

「ええ!?そう来ます?ていうか、こういうシリアスな状況で俺をそうやって弄るの、止めて貰えません?」

「やったあ!」

「!?」

 那津子の腕の中で泣いていたとばかり思っていた玲が、突然満面の笑みを見せながら声を上げた。

「あれえ?玲ちゃん泣いてたんじゃなかったの?」

「えへへへ。ぼく、ドラマとかにも出れるかな」

「玲ちゃんたら、もう」

「やられたな」

 と言った私だったが、彼女の窪んだ目の奥に、きらりと光っているものを見つけていた。

 盲目の人間でも、涙が流れるんだ……

 そんな非常識な事を疑問に思う位、私は情け無い事に、障がい者の事を一番何も判っていなかった人間かも知れなかった。