浅倉が奮発してくれたお陰で、久々に上等な食事にありつけた。

 そして、付け加えるならば、玲のお陰で上等な空間にありつけた。

 玲は話す事が好きなのか、常に会話の中心に居た。

 私は、その中に身を置くだけで、幸せな気分になれた。玲を見つめる眼差しが、自然と綻んでいる。

 彼女の隣に座っていた那津子は、私のそういう姿を見て、少しばかり寂しげな目をした。

 玲を見ているうちに、私は何かを期待する気持ちになり始めていた。その期待は、浅倉も感じていたのか、私が伝えたかった事を玲に話し始めた。

「一度、ちゃんとした所で歌ってみないかい?」

「ちゃんとした所って、コンサートとかってこと?」

「うん」

「このぼくが!?ほんとに!?」

「ああ。今日の玲ちゃんの歌を聴いたら、誰だってそう思うさ」

「すごい!ねえねえ、なっちゃん、ぼくがコンサートだって!」

「兄さん、言った通りだったでしょ。とんでもない子だって」

「うん。まさしくとんでもない子だ。少なくとも、今俺がプロデュースしているRUIなんかより、何倍もいいよ」

「おいおい、RUIと玲ちゃんを同じ土俵に上げたら失礼だろ」

「フーさんの言う通りだ。あんな腰振りしか能が無いグラドル崩れと一緒にしちゃいけなかった」

「兄さん、言葉に気を付けてよ。玲ちゃんの前で余り下品な言葉を使わないで」

「そうだそうだ」

 無邪気にはしゃぐ彼女が、私には眩しく見えた。